diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

最善の糖尿病治療は人それぞれ違う

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糖尿病治療において、これがベストと言い切れる治療法はなく、それこそ十人十色といったところです。

 

もちろん、医学的には推奨される治療法というのは存在するのですが、結局のところ絵に描いた餅になって継続出来なければ意味がないということです。

 

例としては

・1日4回のインスリン注射が推奨されるが、結局昼は忙しくて注射出来ていないような方。こういった方は、朝、夕の混合型インスリン注射、もしくは1日1回の持効型インスリンと飲み薬を組み合わせた方が現実的です。

 

・肥満を伴っており、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などの減量効果のある薬剤が適しているが、薬代が高額となり継続的に通院する事が難しくなってしまう方。

どんなに薬物療法が進歩しても生活習慣病と言われる糖尿病において食事療法の徹底が最優先となります。こういった方は、まず食事療法、適度な運動療法を見直した上で、メトホルミンなど薬価の安い薬物療法を組み合わせていく事が現実的な選択肢となります。

また、インスリン注射を漫然と継続しているにおいても、3kg程度の減量でインスリン離脱出来る可能性は飛躍的に高まります。

 

今後は患者さん自らが、様々な選択肢から治療を選択していく時代になっていくものと思われます。

そう考えると医療というのは医師が患者さんに治療を押し付けるようなものでもなく、顧客に対する単純なサービス業でもなく、健康を守るパートナーのような位置づけなのかと思われます。

生活や食事などの相談希望の方

糖尿病は、薬物治療だけでなく、食事を中心に普段の生活面が非常に重要です。また、インスリン注射の打ち方、自己血糖測定器の使い方なども、正確に理解し、確実に実行する事が大事です。

1ヶ月に1回通院するとしても、残りの日々は自分自身で管理する事になるからです。

 

当院では、医師が診察の際になるべく丁寧にお話をお聞きしておりますが、時間的に限界もあります。よりまとまった時間での療養指導を希望の方は、栄養相談という形で管理栄養士が相談に乗らせて頂きます。食事のみならず、注射や自己血糖測定器の使い方なども含めて、心配な事がある方は遠慮なく御申し出ください。

ビクトーザの最大容量が倍まで可能に

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GLP−1受容体作動薬であるリラグルチド(商品名 ビクトーザ)の投与可能な1日用量は0.9mgでしたが、最近その倍である1.8mgまで可能となりました。GLP-1受容体作動薬には、1日1回タイプのビクトーザ、週1回タイプのトルリシティなどが上市されており、週1回タイプの利便性からトルリシティのシェアが高い状況ですが、体重減少効果に関しては1日1回タイプの方に分があります。そのビクトーザの最大容量が、倍量可能になったわけで、高度の肥満を伴った糖尿病患者の選択肢が広がったことになります。

草加市健診行っています

当院では、6月1日(土)〜12月20日(金)までの期間、特定健診後期高齢者健診、一般健診、肝炎ウイルス検診、大腸がん検診行っています。
また7月1日(月)から9月30日(土)まで肺がん検診を行います。

尚、肝炎ウイルス検診、一般健診は、はがき・保健センターでの申込制(ご自身で)となっております。大腸がん検診、肺がん検診は申込不要、受診券なしです。

ご希望の方は、電話やメールでの事前予約をお願い致します。特に午前中が混雑しておりますので、待ち時間短縮のためにもよろしくお願いします。

減量効果のある糖尿病薬について

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現在の糖尿病治療薬の花形(?)と言えば、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬だと思います。各種ガイドラインにおいても、肥満型糖尿病に対しては公式に推奨されるようになってきました。この2つの薬剤の最大のメリットは、それぞれ違った機序で減量効果があることです

 

従来の糖尿病薬と言えば、SU薬(グリメピリド、グリクラジド、グリベンクラミドなど)やインスリン注射を含め、適切な食事療法を徹底しない限り、肥満を招くものがほとんどでした。

飽食、運動不足の現代社会においては、肥満型の糖尿病患者が増えており、そういった薬を不適切に使用すれば、更なる肥満の悪化につながることも多いのです。肥満はいわば糖尿病の川の上流ですから、肥満を改善する事が糖尿病の改善につながるのは当然です。そこで最近、世界的に減量効果のある糖尿病薬が主流となってきています。

 

内服薬としてのSGLT-2阻害薬、そして注射薬のGLP-1受容体作動薬は、両者ともに明らかな減量効果が実証されています。

 

 

SGLT-2阻害薬の減量につながる機序としては、尿から1日におおよそ70〜80gのブドウ糖が体外に排泄されることです。ブドウ糖は1g=4kcalですから、大体300kcalのロスということになります。食事療法がしっかりしていれば、平均で2〜3kgの減量が期待出来ます。もちろん、食事運動療法の頑張り具合によっては、もっと劇的に減量される方もいます。

 

 

最近は、GLP-1受容体作動薬の処方が増えています。その中でも週1回注射タイプが患者さんの満足度も高い印象です。

 

GLP-1受容体作動薬の特徴としては

①注射薬である、②食欲抑制を介した減量効果がある、③低血糖を起こさず安全性が高い、④腎機能や動脈硬化など血糖値以外にも良い影響が期待出来る(報告がある)

 

といったところでしょう。

 

血糖値を最も確実に下げるのはインスリン注射ですが、過剰な投与による低血糖や体重増加が問題になることがあります。

そこで、自分のインスリンが残存している方で肥満があるような方には、同じ注射薬でも、むしろGLP-1受容体作動薬の方が有効である場合があります。

 

トルリシティという週1回の注射薬は、デバイスとしても非常に使いやすく(針をつける必要がない!)副作用も少なく患者さんの満足度が非常に高いです。

 

この2つの薬の減量効果はそれぞれ違った機序ですので、両者を併用している肥満患者さんも多く見られます。今後は、患者さん個々に応じたオーダーメイドの糖尿病治療がより求められる時代になってきています。

 

 

これだけ書いておきながらですが、最後に一言。やはり一番基本になるのは食事ですので、まずはそこを勉強、実践してからこういった薬の効果を享受出来るものと思います。

 

1型糖尿病にもSGLT2阻害薬が適応に!

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1型糖尿病の治療は、原則インスリン治療です。

しかし、インスリン治療で厳格な血糖コントロールを目指せば、重篤低血糖や体重増加などの問題が頻発し、少し高めのHbA1cで妥協せざるを得なかったのが現実です。

この度、体重減少効果があり肥満型2型糖尿病で処方が増えているSGLT2阻害薬のイプラグリフロジン(スーグラ)、ダパグリフロジン(フォシーガ)が1型糖尿病に対して適応となりました。

 

このことによるメリットは

インスリンを介さない血糖降下作用であるため、HbA1cの改善、必要なインスリン量の減少、そして体重減少効果が期待出来る事です。

デメリットとしては、副作用としてケトアシドーシスを誘発する可能性があるため、シックデイなどの脱水時は中止とすることが必須です。

 

現在、当院では3名の1型糖尿病患者さんにイプラグリフロジンを内服して頂いていますが、概ねHbA1cは1%弱は低下し、2kg程度の体重減少も見られており、有意な低血糖の増加は見られていません。シックデイ時の対応などの説明をしっかりし、適応を見極めることが必要なのは言うまでもありませんが、1型糖尿病患者さんに有効な治療手段が増えたのは間違いなく非常に喜ばしい事だと感じています。