diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

進化する糖尿病治療

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ここ最近の糖尿病分野では様々な画期的な治療薬、デバイスが登場しています。

DPP4阻害薬登場までは、糖尿病治療と言えば高用量のSU薬(強力な糖尿病内服薬です。低血糖リスクも高い)の内服でコントロールがつかなければインスリン療法へ移行し1日複数回のインスリン注射を受け入れていく・・・というコースが定石でした。現在でも、これらの治療法が適している方がいるのは事実ですが、2009年に登場したDPP4阻害薬、その後のSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などの薬剤により、糖尿病治療の選択肢が格段に多くなりました。

 

糖尿病治療のための最近の話題について記しておきます。

 

GLP−1受容体作動薬、SGLT2阻害薬の全盛期

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6月から長期処方可能になったオゼンピック(セマグルチド)、同様に週1回注射であるトルリシティ、1日1回タイプで確実に効果の望めるビクトーザなどのGLP-1受容体作動薬の処方が増えています。注射というハードルがあり、現状としては週1回タイプのシェアが高くなっています。食欲抑制効果があり、血糖値改善だけでなく体重減少効果、肥満の是正が望めます。

尚、セマグルチドには内服薬であるリベルサスもありますが、11月までは14日の処方制限があります(内服中の患者さん複数います)。起床後に内服し30分飲食出来ないといった特殊な内服方法が必要です。

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その他に、現在の糖尿病薬治療の中心とも位置づけられるSGLT2阻害薬があります。尿から1日70〜80g程度(約300kcalに相当)の尿を体外に排出する事で減量効果が出てきます。心疾患、腎保護作用などの効果も報告されており、ますます推奨度が上がり、処方が増えてきています。

(両薬剤ともに、適切な食事療法との併用により減量効果が発揮されます。)

 

新規のインスリン注射の登場

従来のインスリン注射より作用発現が速い、いうならば”超超”速効型インスリンであるフィアスプ、ルブジェブが登場しました。1型糖尿病などの食後高血糖が抑制しきれない患者様には有効な可能性があります。

また、バイオシミラーという価格の安いインスリンも登場していますので、費用負担が大きいと感じられている方の選択肢となりえます。

 

インスリンとGLP-1受容体作動薬の混合注射が登場

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ゾルトファイ、ソリクアというインスリン+GLP-1受容体作動薬の合剤は、1日1回でインスリンの確実な血糖降下作用と、GLP-1受容体作動薬による体重増加抑制効果が相乗効果をもたらします。

 

フリースタイルリブレの登場、そしてスマホとの連携時代へ

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糖尿病の診療においてフリースタイルリブレ(FGMフラッシュグルコースモニタリング)の登場は画期的な出来事でした。従来の自己血糖測定SMBG(患者さん自身が、指先に針で穿刺して血液を採取して血糖値を自分で測定する事です)に比べて、痛みがないことはもちろん、1日の血糖値の推移を点ではなく線で理解出来るようになりました。

最近は、特定のリーダー(上の写真の黒い機器)でなく、スマホのアプリ(FreeStyleリブレLink)で測定出来るようになり、医師側もクラウドで血糖データを共有可能です。

現在、保険適応になっているのが、1型糖尿病、2型糖尿病でインスリンを複数回注射している方です。

そこで内服薬での治療中の方が自分の血糖トレンドを知りたい場合に2週間の血糖値を知る事が出来るフリースタイルリブレpro(CGMが)あります。こちらは全ての糖尿病患者さんに保険適応になっており、当院でも検査を随時行なっています。

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インスリンポンプ療法、SAP療法の進化

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1型糖尿病患者さんにおいては、従来の強化インスリン療法(インスリンペンによる複数回の注射療法)でコントロールがつかない場合インスリンポンプ療法への切り替えを考慮する場合があります。パッチタイプの機器も登場し選択肢が増えました。また、インスリンポンプ療法と自動の血糖測定を組み合わせたSAP療法(低血糖になると自動的にインスリン注入が停止します。当院で導入実績あり。)も普及の方向に向かっており、今後デバイスの進化により人工膵臓に近い機能をもつようになるのかもしれません。

 

上記に紹介したものが全てではなくその他にも、様々な新薬の発売が予定されており、患者さんにメリットがある治療があれば積極的に取り入れていくつもりです。