パッチ式インスリンポンプ(メディセーフウィズ)について
インスリンポンプ療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusin)とは、携帯型インスリンシリンジを使用し、主に1型糖尿病(もしくはインスリン分泌が高度に枯渇したその他の糖尿病)の患者さんが、インスリンを持続的に皮下投与する際に使用され、より細かいインスリン調整が可能となるため、インスリンペンの複数回打ち(MDI)と比較して、血糖値の変動など血糖コントロールの改善や、食事の際にお腹を出して注射する必要がないため(ボタン操作でボーラス注入が可能)若年者などの満足度向上が期待出来る治療法です。
現在でも下のようなチューブ式インスリンポンプがほとんどですが、インスリン注入部とポンプをつなぐチューブの閉塞などのトラブルが時に起きることがありました。
この点、テルモから発売されているメディセーフウィズは、チューブフリーのパッチ型の構造となっており、こういったリスクもなく、操作はリモコンで可能です。
当院で導入したインスリンポンプの患者さんにおいては、血糖変動の改善に伴いHbA1cが低下したり、ボタン操作で食事の際のインスリン注入ができるQOLの向上などを感じていらっしゃるようです。
1型糖尿病に対する治療としては、依然MDI(インスリン複数回打ち)がメインであり、しばらくはその状況は変わらないものと思われます。
しかし、デバイスの進歩は目覚ましく、FGM(フリースタイルリブレ)も診療報酬に収載されるようになるようですので、患者さん個々の生活スタイルや希望、金銭的事情に合わせて様々なパターンが考えられる状況となりそうです。
1、インスリンペンの複数回打ち(MDI)+SMBG(従来の指先穿刺 1日2〜4回)
最もオーソドックスです。このパターンでも、使い捨てのインスリンペンから、繰り返し使えるインスリンカートリッジへ変更すると少しコストが安くなります。
2、インスリンペンの複数回打ち(MDI)+SMBG(月120回)+FGM(フリースタイルリブレ 補助的?)
これが、診療報酬に載っていない現状でフリースタイルリブレを使用されている方のパターンです。病院が赤字にならないように、SMBGは月120回で算定し、補助的にFGMを使用するパターンです。
3、インスリンポンプ療法(CSII) +SMBG(1日2〜4回)
4、インスリンポンプ療法(CSII)+SMBG(月120回)+FGM
5、SAP療法(Sensor Augmented Pump)+SMBG(校正は必要なため)
SAP療法とは、パーソナルCGM機能(常に血糖値が表示される)を搭載したインスリンポンプ療法です。常に自分の血糖値が確認でき、高血糖や低血糖でアラーム機能があり、より質の高い血糖コントロール が可能となります。
フリースタイルリブレが保険適応に
フリースタイルリブレが、4月の診療報酬改定により保険適応になることが決まったようです。
適応は、強化インスリン療法の方。
具体的には、1型、2型糖尿病問わず、インスリンを複数回注射している方(強化インスリン療法)ということになりそうです。よって内服薬のみの方は依然適応にはなりません。
これまでは、リブレに対する診療報酬が設定されておらず、医療機関側の努力(工夫)で、主に1型糖尿病の方メインで使用されてきましたが、今回の改訂により2型糖尿病の方の使用も現実的となり、特に血糖コントロールの不良な方にとっては、朗報であると考えられます。
フリースタイルリブレは、アボットジャパンの商品名で、フラッシュグルコースモニタリング(FGM)という瞬間的に指先穿刺なく血糖値、そしてそのトレンドがわかる画期的な器具です。
正確には血糖値ではなく間質液のブドウ糖濃度を測定しており、精度の問題は多少ありますが、血糖変動が大きくコントロール不良の糖尿病患者さんの治療には多いに役立つ可能性があり、また指先穿刺を繰り返し指の皮が厚くなり測定困難となった方、痛みの強い方にとっても非常にありがたいものと思われます。
流行しないインフルエンザ
例年、年末年始からインフルエンザが流行し、医療現場はバタバタするというのが恒例なのですが、今年はどうも様相が違うようです。
そういった記事や統計も出ているとは思いますが、あくまで体感的なものですが、自分が医師として臨床に立ってからは最も少ないのではないかと感じます。
理由は様々推測や分析が行われていますが
1、暖冬や季節外れの雨など異常気象によるもの
2、今年のワクチンが当たった
3、コロナウイルス流行に伴うマスク、手洗いなどの感染予防の徹底
これらがその原因ではと推測されていますが確定的なことはわかりません。片や、アメリカではインフルエンザが大流行し多くの死者がでているようで世界的にはそうでもないようです。
そうはいっても散発的にはインフルエンザA、Bの患者さんがでますので、コロナウイルス含めて継続的な感染予防が大事です(ちなみに、コロナウイルスの診療は疑いの患者さんを含めて当院では出来ませんので、お近くの保健所に御相談ください。宜しくお願いします。)
Free Styleリブレproのご紹介(当院で使用しています)
FreeStyle リブレpro (画像はアボット社HP より)
当院では、パーソナルFGMであるFreeStyleリブレを主に1型糖尿病患者に使用して頂いていますが、診療報酬の設定の問題もあり(というよりもリブレに対する診療報酬が定められていません)、限られた方のみ適応となっている現実があります。
FreeStyleリブレ(主に1型糖尿病患者で月1回通院中の患者さんが使用中)
「ニュースや雑誌に載っていたから、自分も使いたかったのに・・・」という糖尿病患者さんの声を何回聞いたかわかりません。2型糖尿病患者さんでも血糖コントロールが不良であったり、低血糖が頻発したり「自分の血糖値がどうなっているのか、詳しく調べてみたい」という思いは皆さんもっているのです。インスリンやGLP-1受容体阻害薬(トルリシティやビクトーザ)などの注射薬を使用している患者さんは、1日1、2回の指先穿刺の自己血糖測定(SMBG)を行っていますが、あくまでも24時間変動している血糖値のワンポイントに過ぎません。
そこで、このフリースタイルリブレproは、上腕に500円玉大のセンサーを貼付け、15分毎に間質液中のブドウ糖濃度を最大14日間に渡って測定し(最大2週間で1340回)、下のようなグラフとして表してくれます。お風呂にも入れますし、装着、取り外しはスタッフが行います。夜間の低血糖などブラックボックスとなっていた部分まで見えるようになるため、より安全かつ良好な血糖コントロールを目標にできます。
FreeStyleリブレと違い、リアルタイムで血糖値は分かりませんが、2週間後にまとめて結果が分かるタイプです。
半年〜1年に1回程度、血糖変動をチェックする目的にも使用出来ます。
このFreeStyle リブレproですが、施設基準がありクリニックで導入している施設は少ない状態です。
インスリン治療中、もしくは血糖コントロールの不良の方は保険適応となっております。
当院では、このFreeStyleリブレproを使用し、より安全で良好な糖尿病コントロールに活用していく方針です。
10月からゾルトファイの処方制限解除
インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射剤であるゾルトファイが2020年10月から処方制限解除となります(日数制限無く普通に処方可能となります)。
ゾルトファイは、持効型インスリンであるインスリンデグルデク(商品名トレシーバ)とGLP−1受容体作動薬のリラグルチド(商品名ビクトーザ)の配合注射剤です。
国内の臨床試験ににおいては、インスリン単独、GLP-1RA単独に比較して優位にHbA1c低下効果が現れ、低血糖などの増加も見られていません。
まさしく、インスリン治療の確実な血糖降下作用とGLP-1RAの体重減少(増加抑制)、グルカゴン抑制、その他心血管、腎臓などへの効果など(評価はこれから)など、いいとこ取りの薬剤である可能性があります。
メリットとして、確実なHbA1c低下効果、1日1回というシンプルさ、体重増加を来しにくい・・・・、逆にデメリットとしては、比較的高額であること(内服薬を減らせれば必ずしもそうとも限らない?)、やはり注射薬であるという心理的、物理的なハードル・・・・が挙げられます。
今後、この薬剤によってメリットが大きいと考えられる方としては
①インスリンを複数回注射しているが、打ち忘れが多く、体重増加傾向、HbA1cもいまいち・・・といった方
②複数の内服薬を使用しているが血糖コントロールがつかない方
③いわゆるBOT(持効型インスリンと内服の併用療法)を行っているが、血糖コントロールがつかない方
④GLP-1RAの治療で血糖コントロールがつかない方
⑤糖尿病の発症時、高血糖で受診される方(HbA1c 10%以上、血糖値200以上・・・)の初期治療
挙げればいくらでも出てきますが、複数の内服薬、インスリン製剤を使用している方が治療をシンプルにし、それにも関わらず血糖値が改善する可能性があると考えられます。