糖尿病の治療中断に注意
新型コロナウイルス問題をきっかけに糖尿病治療を中断されている方もたくさんいらっしゃると思いますので、糖尿病の治療中断の記事を書きます。
実際、6月になってから2月頃の受診を最後に当院へ転院されてくる患者さんが増えています。
上の表は、平成24年のデータですが、糖尿病が強く疑われる人の治療の状況です。赤の部分の人たちは、全く未治療で糖尿病を放置していると考えられる層で、緑の部分は治療を一度は受けたが現在は中断している人です。
例えば、40代男性では、52.2%の方が全くの未治療、治療中断が4.9%、計57.1%の方は糖尿病を放置している事になります。
糖尿病は、「治す」病気ではなく、「コントロール」する病気と言えますので、こういった放置状態の方々が将来的な合併症の発症リスクが高くなります。年齢が上がるにつれ、受診率は上がっていきますが、それでも4人に1人は治療していない方がいることになります。
こういった未治療であったり中断した理由は何点か考えられます。たとえば
- 糖尿病は自覚症状に乏しいので、治療の必要性に気付いていない
- 仕事が忙しくて受診する時間がない
- 治療費が高額
- 病院の雰囲気が嫌い
- 受診しても、いつも同じ薬をだされるだけで血糖値がよくならない etc
当院では、こういった患者さんの声を真摯に受け止め、患者さんの置かれた状況にあった無理無く継続できる治療を提供出来るように努力しています。いくら医学的には理想的でも、続かなければ意味がありません。
健診で血糖値が高いと言われているが受診をためらって数年経つ方、以前は通っていたが現在は中断してしまっている・・・・こういった方は早めの受診をお勧め致します。
「なんとなく体がダルい」原因は
緊急事態宣言が解除された辺りから、「なんとなくダルい」という症状の患者さんが増えてきました。おそらくは、長引く自粛生活によるストレス、運動不足によるものが多いと思われます。ある意味、それぞれの感じ方でもあり、どんな病気でもダルさはでる可能性はありますが、注意すべき内科的な病気について考えてみました。
なんとなくダルいということは、身体のどこか一カ所が痛いとか苦しいというよりは漠然とした症状ということになります。
1、甲状腺機能低下症
橋本病を背景にもつ事が多く、ゆっくりと進行するためなかなか気付かれにくい病気とも言えます。前頸部の腫れが目立つ場合もあります。採血と甲状腺の超音波検査を行います。
2、貧血
貧血もゆっくり進行した場合、体が適応してしまい、中等度以上の貧血でも普通に生活している方が多いです。失血している場合が多く女性では生理や婦人科疾患(子宮筋腫など)、男女問わず消化管出血(胃潰瘍、大腸がん)などの検査が必要になる場合があります。貧血は採血検査でわかります。
3、糖尿病の放置
糖尿病は、初期段階では無症状ですが、血糖値が高くなるにつれ倦怠感を感じる方が多くなります。数年放置されると、下肢の神経障害が出現し、足の置き所のないような違和感が出現する方もいます。糖尿病の診断には、採血、検尿を行います。
4、高血圧の放置
高血圧も糖尿病と同様に基本的には無症状ですが、放置する期間が長引くに連れ、なんとなく肩こりがする、たちくみがするといったような倦怠感を訴える方が多くなります。高血圧の診断には、診察室血圧、家庭血圧の測定が必要です。
5、更年期障害
女性の場合、生理不順が出た辺りから更年期障害の症状を訴える方が増えます。内科でも対症療法として漢方薬を処方する事もあります。婦人科で、女性ホルモンの補充療法を行う方もいます。採血検査では、女性ホルモン、FSHを測定することもあります(女性ホルモン↓、FSH↑となります)。
最近では、女性だけでなく男性の更年期障害も注目されており、男性ホルモン補充療法などを行っている泌尿器科の医療機関もあるようです(当院では出来ません)。
5、肝機能障害、腎機能障害、心不全など
重要臓器障害による倦怠感はありえます。採血、心エコーなどを行います。
6、ポリファーマシー(多剤服用)
特に睡眠薬、安定剤などを複数服用されている方は、減薬によって体調が回復される方もみえます。
7、下垂体前葉機能低下症
副腎疲労などと言われる事もありますが、ACTH単独欠損症などの下垂体ホルモンの低下が、原因不明の体調不良の原因として診断されることがあります。この際の採血検査は、空腹時に30分程度ベッドで安静に臥床してもらった状態で施行することが重要です(ACTH、コルチゾール、電解質、血糖値などをチェックします)。確定診断には負荷試験が必要になります。
その他、様々な悪性疾患の初期症状の可能性もありますし、あまりにも症状が長引く場合は内科などの受診をお勧めします。
内科的な疾患が否定的であれば、このストレス下におけるメンタル的な要因が可能性として高くなると思われます。ひどい場合は心療内科での御相談をお願い致します。
まだまだ大変な時期が続きますが、体調管理にはお気をつけ下さい。
動脈硬化検査について(頸動脈エコー)
糖尿病、高血圧、脂質異常、尿酸などの生活習慣病は自覚症状には乏しいですが、サイレントキラーとも呼ばれ、放置しておくと動脈硬化が進行し心筋梗塞、脳梗塞など重大な血管病を引き起こします。
動脈硬化を客観的に検査する検査としては頸動脈エコー、CAVI、ABIがあり、当院ではリスクのある方に積極的に行っております。(ちなみに、上記のような動脈硬化のリスクがある方が保険適応になりますのでご注意ください。)
頸動脈エコー
▶︎頸動脈エコーでわかること
頸動脈エコーは、動脈硬化の程度を視覚的に判断出来る検査です。
超音波検査ですので、痛みも被曝もなく10〜15分程度で終了する簡便な検査です。
頸動脈は全身の血管のなかでも最も動脈硬化が起こりやすい血管であり、頸動脈の動脈硬化が進んでいるほど、他の部位の動脈硬化が進んでいると考えられます。
▶︎頸動脈エコーを受ける事が推奨される方
・脳血管疾患が疑われる方や動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の方)の方
・糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血漿、喫煙、メタボリックシンドロームなどの動脈硬化リスクが高い方
▶︎頸動脈エコーで調べる観察項目
血管の厚さ⇒IMT(Intia Media Thickness)
血管は輪切りにすると3層構造をしていますが、内側2層の内膜中膜を合わせた部分をIMCといいその厚さのことをIMT(Intia Media Thickness)といい、動脈硬化の指標となります。IMTは通常1mm未満ですが、それを超えると動脈硬化が示唆されます。加齢によっても動脈硬化は進行しますので、以下のように年齢によっても基準値が変わります。
血管の狭窄度合い
頸動脈の血管の内腔を測定し、動脈硬化により血管の狭窄やつまりがないかを調べます。狭窄の程度がひどくなると血流が速くなりますので(ホースを細めると水流が速くなるのと同じです)、血流速度も測定します。血管が非常に細く狭くなっていれば脳梗塞のリスクもありますので緊急性が出てきます。緊急性の程度によって治療の強化(LDLコレステロール値の管理をより厳しくする、抗血小板剤[血をさらさらにする薬]内服開始、場合によっては外科的処置の適応で脳神経外科への紹介)を考える必要があります。
プラークの観察
血管の部分的な大きなこぶのような突出部分のことをプラークといいます。プラークは、破綻して(破れて)脳梗塞の原因となる事があります。大きなプラークや、見た目が不安定で破れやすそうなプラークの場合、LDLの目標値を非常に厳しくする(100未満、場合によっては70mg/dL未満に)など治療強化が必要な場合があります。治療強化により、プラークが縮む(退縮する)可能性もあります。
頸動脈エコーを施行した人の方が、将来的な動脈硬化性疾患が少なくなるという報告もあります。これは、自分の血管の状況を客観的に見る事で、生活習慣病の管理に対するモチベーションとなり、定期的な内服や通院につながりやすい事が要因と考えられます。なんとなく、糖尿病やコレステロールの薬を処方され内服している・・・という患者さんは定期的に血管の状況を観察する事で治療意欲にも良い影響があると思われますので、検査をお勧めしています。
混雑状況について
当院は、予約優先性となっており、可能な限り来院前にお電話、もしくはネット予約をお願いしており、来院患者数が時間によって偏らず平準化するように努力しています。
しかし、どうしても患者さんが集中しやすい時間帯がありますので、当日受診される方などはなるべく下記の時間を避けて受診するようにお願い致します。
混み合いやすい時間帯
平日 9:00〜11:00、14:30〜16:00
土曜日 全体的に混み合いますが、特に9:00〜11:00
緊急事態宣言が出されて以降、都内のクリニックに通えなくなった糖尿病や生活習慣病の転医患者さんが増えております。初診時には、なるべく丁寧な診療を心がけており、ある程度の時間がかかる可能性がありますので、必ず来院前に予約をとって頂きますようお願い致します。
当院の新型コロナウイルス感染対策についてのまとめ(最新版)
当院で行っている新型コロナウイルス感染対策についてまとめましたので、心配な方は事前に御確認頂ければと思います。今後も、状況に応じて必要な対策を随時行って参ります。これらの対策により当院院内における感染リスクは非常に低いものと考えております。
患者様におかれましても、受診前の体温測定、マスクの着用(診察時も)、咳エチケット、空いている予約時間での来院などに、引き続き御理解、御協力の程宜しくお願い致します。
当院での新型コロナウイルス感染拡大予防の取り組み
①新規のかぜ、発熱患者様の診療制限(かかりつけの患者さんについては、必ず事前に電話にて御相談ください。)。
糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病、甲状腺、循環器疾患、禁煙外来、雇用時健診、定期健診などの新患様の受付は通常通り行っております。
②予約制による患者数の制限
③換気の徹底、院内のアルコール消毒による清掃の徹底
④雑誌類の撤去
⑤ソファーや椅子の間隔の確保
⑥ウォーターサーバーの撤去
⑦アルコールによる手指消毒の励行
やはり接触感染の予防が最も大事です。手洗い、アルコールによる手指消毒は非常に有効です。
⑧次亜塩素酸空気清浄機 ジアイーノの設置
待ち合い室、診察室に設置しています。
⑨ベランダ待ち合いの設置
待ち合い室が込み合った場合や希望者は、広いベランダでお待ち頂くことが可能です。またかかりつけ患者さんで体調不良がある方も、こちらで待機や診察を行います。
⑩受付、診察室、採血室にビニールカーテンの設置
受付に設置している機関は多いですが、今回、医師、看護師⇄患者間の飛沫感染予防のため、診察室、採血室にも設置しました。必要に応じ医師や看護師はフェイスシールドも装着しております。聴診や触診が必要な場合は、都度アルコール消毒の上行うようにしております。
4月29日(水)〜5月6日(水)休診のお知らせ
4月29日(水)から5月6日(水)までを休診とさせて頂きます。5月7日(木)から通常診療となります。全国において通常のGWとは違う様相となっていますが、皆様におかれましても感染に気をつけ、ストレスを溜め込み過ぎず健康維持にご留意いただきますようお願いします。御不便をおかけしますが、何卒宜しくお願い致します。(写真は、気分だけでもリゾートにしてみました)。