妊娠糖尿病の覚え方
覚え方:急に(92)妊娠糖尿病と言われていいや(180)と言っていると、いい子は授かりませんよ(153).
妊娠糖尿病の診断基準:75Gブドウ糖負荷試験において次の基準の1点以上を満たした場合に診断する
空腹時血糖値 ≧ 92mg/dL
1時間値 ≧ 180mg/dL
2時間値 ≧ 153mg/dL
但し、「臨床診断」において糖尿病と診断されるものは妊娠糖尿病から除外する。
妊娠糖尿病の定義は「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常」です。つまり、一般的な糖尿病の基準は満たしてはいない、少し血糖値が高い段階ということです。
では、なぜこのような妊娠糖尿病という基準を設けているかといいますと
①妊娠自体が糖代謝悪化のきっかけになる。
②妊娠中は比較的軽い糖代謝異常でも母児に大きな影響を及ぼしやすいため、その診断・管理は非妊娠時とは違う特別の配慮が必要である(糖尿病の母親からは巨大児や奇形などの発生率が上がる事が知られています)。
③妊娠中の糖代謝異常は分娩後にしばしば正常化する。
④妊娠中に糖代謝異常をきたした者では将来糖尿病を発症する危険性が大きい。
などの特殊性があるためです。 参考文献:糖尿病専門医ガイドブック
「糖尿病は治りますか?」
糖尿病患者さんから良く聞かれる質問です。
現時点では、「治らない」「むしろ進行します」というのが正確な答えになるかと思います。
それは、糖尿病がそもそもどういう病気なのか、なぜ血糖値が下がりにくいのかを考えるとわかりやすいです。糖尿病は、いずれにせよ「(唯一の血糖降下ホルモンである)インスリンが足りない」病気です。糖尿病発症時点でも、かなりのインスリン不足があると言われており、糖尿病歴が長くなればなるほど、インスリン工場である膵臓のβ細胞に多大な負担がかかり、更にインスリンを分泌する能力は落ちていくことが知られています。(将来的にiPS細胞で膵臓の再生などが可能になれば、「治る」病気になるかもしれません。)
それを端的に表したのが上の図です。糖尿病を発症して年数が経過すればするほど、インスリンを分泌する能力は低下し、血糖値はむしろ上昇していくことが表されています。定期的に病院に通院して処方された薬をきちんと内服してもHbA1cが下がらない・・そのような場合は、食事や運動をさぼっているからでなく、内服薬やインスリン治療など薬物治療の見直しが必要な時期かもしれません。
では糖尿病になったら一巻の終わりでしょうか。決してそうではありません。
糖尿病発症早期から(だから健診などが重要です)、正しい知識のもとに、定期的な検査や治療を行い、上手にコントロールすれば、大きな合併症無く健康に過ごす事も可能な時代となってきました。
糖尿病は体質のようなものですので、その体質にあった生活を実践していく事が重要です。食事や運動などの生活習慣の見直しがまず第一であることは言うまでもありません。
クリニック改装しました
GW期間中、長いお休みを頂きご迷惑をおかけしました。その間に、クリニックの改装を行いました。多少の変化ですが、栄養相談の専用の部屋が出来たり、待ち合いの壁や本棚が奇麗になったり、かなりいい感じになっています。是非、クリニックで実際に確認して頂きたいと思います。
今後も、患者さんにとってより快適な環境で、より良い医療を提供出来るようスタッフ一同努力して参りまので宜しくお願い致します。。
外来でのインスリン導入のメリット
糖尿病の飲み薬を増やしても(その前に食事や運動療法を見直すことは言うまでもありません)HbA1cの値が高止まりの状態になると合併症進行を防ぐためにもインスリン注射が考慮されます。
そしてかかりつけ医の先生から大きな病院の糖尿病科へ紹介され、2週間の「教育入院」が行われ、飲み薬を全て中止し、強化インスリン療法と言われる1日4回の注射が行われるのです。
この事によるメリットは、入院という非日常を経験する事で、糖尿病に対する意識や取り組みが変わったり、カロリー計算された糖尿病食を実際に経験する事が挙げられます。また、悪循環の続いた(糖毒性と言います)身体に、1日4回のインスリンが染み渡り、一度リセットする(糖毒性の解除)ことで、自分の残存してはいたが眠っていた血糖値を下げる力が回復することが期待されます。
医学的にはいいことずくめだと思うのですが、デメリットは何でしょうか。
入院でのインスリン導入のデメリット
・入院費が高額
おおよそ2週間の入院で16万円程度かかると思われます(以前調べた金額ですので誤差があると思われます。)。下手をすると1年分の医療費がかかってしまうと言われています。
・仕事への影響
40代、50代の働き盛りの人が2週間以上職場を離れて入院するということは、この不安定な世の中では社会的な立場を危ういものにしてしまう可能性があります。
・あくまで「教育入院」という特殊な状況であるということ
入院中は素晴らしい血糖値で退院となるのですが、退院後は多忙な日常生活で理想通りにはいかず、すぐに血糖コントロールが乱れてしまうというパターンです。
入院が難しい人はインスリン注射を諦めて、外来通院で効果のない飲み薬を続けるしかないのでしょうか。HbA1cが高いまま推移すれば、合併症が進行してしまいます。
そこで、外来でのインスリン導入をお勧めしています。
確かに外来でインスリン導入となると、教育入院のような劇的な改善や連日のきめ細かい指導といったことはやや難しくなります。ただ、現在の優れた持効型インスリンを用いたBOTと言われるインスリン療法などでは、低血糖のリスクが非常に低く、少しずつ改善していくことが可能だと思っています。外来でのメリットは、いくつもあると思っています。
外来でのインスリン導入のメリット
・仕事への影響が少ない
外来での導入となるので、最初の1ヶ月は1、2週間に1回の通院となりますが、仕事などに影響なく始められます。また、1日1回の注射ですので、朝や寝る前に自宅で注射すれば、職場で注射する必要もありません。1日1回の注射は緩徐な効果ですので、低血糖を起こす心配も最小限に抑えられます。
・費用が入院に比べてはるかに抑えられる
・普段の生活で始めるので地道に改善していける
教育入院後のリバウンドといったことはありません。
入院、外来ともにメリット、デメリット両方ありますのでその方の状況に合わせて選択するべきだと思います。ただ、入院での導入にこだわるあまり、入院出来ない方のインスリン導入が先延ばしになり血糖コントロールが悪いまま放置されているといったことは避けなければなりません。
当院では、外来でインスリン導入を多数行っております。まだシステム上、不十分な点もありますが、今後更にきめ細やかな指導やフォローを心がけ、入院での導入に劣らないよう努力していく所存です。
飲み薬で血糖値がずっと悪くインスリン導入を勧められているがためらっている・・・・こういった方は一度御相談ください。
甲状腺が腫れていると言われたら
健診や人間ドックで、甲状腺の腫れを指摘される方がいらっしゃると思います。
その際、どういったことを心配すればいいのかおおまかにお伝えします。
① まず本当に腫れているのか、腫れているのは甲状腺なのか確かめてみましょう。触診で甲状腺が本当に腫れているかどうか判断するのは、熟練した医師でも難しい場合があります。実際は腫れていない場合もよくあります。甲状腺の超音波検査を施行すれば、確実にわかりますので一度は実施しましょう。痛みもなく簡単な検査ですのでご安心ください。
② 甲状腺が腫れていると判明した場合、大まかにわけて2つのことを考える場合があります。
A . 甲状腺が全体的に腫れている
B . 甲状腺に出来物(腫瘍、嚢胞、過形成など)が出来ている
Aの場合、代表的な病気としては、橋本病、バセドウ病などが挙げられます。これらの病気の場合、甲状腺の働きに異常を伴う事がありますので、採血検査で甲状腺ホルモンを確認する必要があります。また両疾患ともに、自分の甲状腺に対する自己抗体が出来てしまう病気ですのでこれも採血でチェックする方が望ましいです。
大体1週間で採血結果がでます。
Bの場合、代表的には甲状腺癌、腺腫瘍甲状腺腫などが考えられます。サイズが大きく、形がいびつで砂粒のような石灰化を伴うようなものであれば甲状腺癌の可能性がありますので、穿刺吸引細胞診という検査が必要になる場合があります。
腺腫様甲状腺腫など良性と思われる場合は3ヶ月〜1年に1回程度超音波検査でサイズの変化を経過観察していく事になります。
甲状腺が腫れているかもしれない、と指摘された方はお気軽に受診してください。基本的には採血検査と超音波検査を行う事で大抵の甲状腺疾患の診断が可能です。
穿刺吸引細胞診や手術、アイソトープ検査(テクネシウムシンチ)などの精査が必要になる場合は、高次医療機関と連携をとっておりますのでご安心ください。
糖尿病と癌について
糖尿病患者さんの注意する事と言えば、特有の慢性合併症(神経障害、網膜症、腎症など)が頭に浮かびますが、実は癌が増える事が判明しています。
下の図は、糖尿病患者さんの死因の統計ですが、癌(悪性腫瘍)が1位となっています(これは、日本人全体の死因1位と同じです)。ところが、問題なのは、糖尿病患者さんは、そうでない人に比べて癌になる確率が高いということです。
日本人糖尿病患者の死因
日本糖尿病学会誌50(1) 47-61 2007
これはアメリカのものですが、糖尿病と癌のリスクについてのデータです。
Johnson J:ADA 70th Scientific Sessions, 2010,Orland
日本では糖尿病で特に増えると言われるのが、肝臓癌(肝細胞癌)、膵臓癌、大腸癌と言われていますが、その他の癌も増える傾向が認められます。個人名を確証がなく挙げるのはどうかと思いますが、先日亡くなられた野球の星野監督も長年糖尿病を患っていたとの情報を見ました(これにつきましては真偽は不明です)。
また上の表では前立腺癌が唯一リスク低下(減る)傾向となっていますが、これは糖尿病患者において男性ホルモンが低下することとの関連が指摘されています。
米国糖尿病学会と米国癌学会が合同でコンセンサスレポートを発表
Giovannuci E,Cancer J Clin,60,4,2010/Giovannuci E;Diabetes Care,33,1674,2010
このような状況を受けて、上記のような提言が出されています。
現代医学においても、100%の確率で早期癌の発見は難しいのは事実です。糖尿病患者さんは、必要以上に恐れることはありませんが、定期的ながん検診を受けましょう。
当クリニックでは、少なくとも市のがん検診(肺癌、大腸癌)、1年に1回の腹部エコー(当院で施行しています)は推奨し、症状や希望に応じて胃カメラ、大腸カメラ、CTなどの検査の推奨や紹介を行っていく方針です。
新年あけましておめでとうございます。
昨年2月にクリニックはスタートしましたが、おかげさまで新年を無事迎える事ができました。
今年も、より一層患者さんの健康に貢献出来るよう、スタッフ一同取り組んで参りますので、宜しくお願い致します。