diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

急な体重減少で考えるべき疾患

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半年など短い期間で10kg近い体重減少が減った場合、どのようなことが考えられるでしょうか。

もちろん、いま流行りの糖質制限を厳格に行っていればそのくらいの体重減少も不思議ではありません。松村邦洋さんをみても分かります。

こういった痩せようとして痩せた場合はのぞいて、なぜか原因はわからないのに体重が落ちてきてしまったという人がいます。

その場合、もちろん癌などの悪い病気を否定するのが一番大事です。そして下痢や腹痛などの消化器症状が続く場合は、膵炎や炎症性腸疾患なども鑑別に挙がります。咳などが続く場合は、結核などの感染症も否定は出来ません。褐色細胞腫など稀な内分泌疾患も体重減少の原因となります。

 

これらに当てはまらない場合で最も多いと思われるのが、

・未治療の糖尿病

バセドウ病

です。極端に尿が多く出て口が渇くといった場合は糖尿病が急激に悪化している可能性があります。糖尿病による多尿が体重減少の原因かもしれません。

多汗、動悸、震えなどあり首の腫れがある場合は、バセドウ病の可能性が高まります。実際、体重減少を主訴に受診されバセドウ病が発覚した患者さんが、過去3ヶ月で3人いました。

 

原因不明の体重減少があった場合、これらの疾患の可能性を考えた検査が必要になります。

健診で「血糖値が高め」と言われた場合

 

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健診を受けると「ちょっと糖が高め」「様子をみましょう」と言われる方が多いと思います。いわゆる境界型とかアメリカでは前糖尿病(prediabetes)と言われるような方ですが、実はそのなかにはブドウ糖負荷試験を行うと既に糖尿病になっている方も混じっています。初期の糖尿病は、健診やドックで行う空腹時の血糖値とHbA1cだけでは2、3割が見逃されるといった報告もあります。

糖尿病の診断のためには、まずブドウ糖負荷試験(当院でも毎日のように施行しており、甘いソーダを飲んで2時間後までの血糖値を採血する簡単な糖尿病の診断の検査です)をお勧めしますが、ではその検査まで行って糖尿病に至っていない方は放置しておいていいのでしょうか。今日は糖尿病初期の方、もしくは境界型でも軽視してはいけない理由についてupしてみました。

 

「軽症」の糖尿病を放置してはいけない3つの理由

 

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  1. 境界型から、心血管疾患のリスクが上昇

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HbA1cが6.0〜6.4程度のいわゆる境界型の時期でも、食後の血糖値が高いタイプでは心血管疾患のリスクが高いことが知られています(DECODE study、舟形町研究など)。食後高血糖や、それに対応した高インスリン血症は血管内皮機能を低下させ動脈硬化を進展させると言われます。糖尿病じゃなくて、境界型で良かった・・とはならないのが現実です。

 

 2.  “高血糖毒性”の悪循環を招く

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高血糖そのものがインスリン工場である膵β細胞機能を低下させ、ひいては血糖コントロールが難しい進行した糖尿病を招きます。この負のスパイラルに陥らないために、軽度の高血糖の時期から、血糖値の正常化を目指した治療が必要です。

 

 3.   合併症は、予防するしかない

 

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血糖コントロールの悪い状態で数年経過すると糖尿病特有の慢性合併症が出現してきます。合併症に関しては、出てしまったものに関しては基本的に取り返しがつきません。初期からの良好な血糖コントロールを続けることが一番重要です。ある意味、糖尿病で最も大事な時期は、発症初期なのです。

 

 やはり糖尿病は、早期発見・介入、継続治療が大事です。

 

フリースタイルリブレ(FGM)保険適応

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この9月からインスリン患者さんに対して保険適応となりました。ただ、現状の自己血糖測定(SMBG)の補完的役割で、保険点数も現状の枠組みの中でということです。フリースタイルリブレ(FGM)だけで普段の血糖測定を完結できず、従来のSMBGも必ずやってねということです。保険点数の上乗せもありませんので、現状としては相当に使う必要のあるような血糖コントロール不安定な1型糖尿病患者さんに限られるのかなといった印象です。糖尿病学会からも即声明が出され、かなり注目度が高いため、今後も推移を見守っていきたいと思っています。

どこまでが「病気」?

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都内のホテルでの泊まり込みの勉強会に参加しています。

人前でスピーチをしたり緊張する場面でお腹が痛くなることはありませんか?「お腹の弱い人」の一言で片付けられそうなものですが、過敏性腸症候群IBS)でよく見られる症状です。ストレス→ストレスホルモンであるCRH分泌が増強→肥満細胞活性化→腸管透過性亢進という機序が一因であると研究によりわかってきているとのことです。過去には気のせいとされていた症状や現象も医学の進歩でしっかりと病態が解明され、病名がついてきています。医学の進歩としては素晴らしいことですが、果たしてどこまでを「病気」と言っていいのかといった気持ちもしてしまいました。たまには、こういった投稿もしてみました、では。

フリースタイルリブレ活用の実際

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先週、実際にフリースタイルリブレを使用されている1型糖尿病の方が受診されましたので、許可を得て画面を撮影させて頂きました。

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過去30日間の6時間ごとの血糖値の平均です。

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同じく過去7日間のもの。

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1日の血糖値の推移がグラフになっています。概ね良好な血糖値と言える青い帯の中にある事がわかります。

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同様です。これをみると、8月16日、17日と2日連続で午前中の10時頃に血糖値のピークがある事がわかります。血糖を上昇させるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)

血中濃度のピークが午前中にあることから、1型糖尿病の方で多くみられるパターンです。

 

操作も簡単ですぐに慣れてしまうようです。現状、保険適応になっていないのがネックですが、血糖コントロール不良の方には非常に有効なデバイスだと考えています。

甲状腺が腫れていると言われたら

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健診や人間ドックで、甲状腺の腫れを指摘される方がいらっしゃると思います。

 

その際、どういったことを心配すればいいのかおおまかにお伝えします。

 

 

① まず本当に腫れているのか、腫れているのは甲状腺なのか確かめてみましょう。触診で甲状腺が本当に腫れているかどうか判断するのは、熟練した医師でも難しい場合があります。実際は腫れていない場合もよくあります。甲状腺の超音波検査を施行すれば、確実にわかりますので一度は実施しましょう。痛みもなく簡単な検査ですのでご安心ください。

 

② 甲状腺が腫れていると判明した場合、大まかにわけて2つのことを考える場合があります。

  A .  甲状腺が全体的に腫れている

  B .  甲状腺に出来物(腫瘍、嚢胞、過形成など)が出来ている

 

Aの場合、代表的な病気としては、橋本病、バセドウ病などが挙げられます。これらの病気の場合、甲状腺の働きに異常を伴う事がありますので、採血検査で甲状腺ホルモンを確認する必要があります。また両疾患ともに、自分の甲状腺に対する自己抗体が出来てしまう病気ですのでこれも採血でチェックする方が望ましいです。

大体1週間で採血結果がでます。

 

Bの場合、代表的には甲状腺癌、腺腫瘍甲状腺腫などが考えられます。サイズが大きく、形がいびつで砂粒のような石灰化を伴うようなものであれば甲状腺癌の可能性がありますので、穿刺吸引細胞診という検査が必要になる場合があります。

腺腫様甲状腺腫など良性と思われる場合は3ヶ月〜1年に1回程度超音波検査でサイズの変化を経過観察していく事になります。

 

 

甲状腺が腫れているかもしれない、と指摘された方はお気軽に受診してください。基本的には採血検査と超音波検査を行う事で大抵の甲状腺疾患の診断が可能です。

穿刺吸引細胞診や手術、アイソトープ検査(テクネシウムシンチ)などの精査が必要になる場合は、高次医療機関と連携をとっておりますのでご安心ください。

 

 

血糖値が悪いのは、患者さんの努力が足りないから?(再掲)

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糖尿病患者さんが良好な血糖コントロールを保つのはそれほど簡単なことではありません。

糖尿病の外来を受診して血糖コントロールが悪化すると、主治医から「食事や運動をもっと気をつけなさい」と言われる患者さんが多いと思います。

もちろん、ストレスで食事が乱れたり冬場は寒さの影響もあって運動不足に陥ることが多いのは確かです。適切な食事療法、運動療法というのは糖尿病治療の根幹ですし、それはどんなに医学が発展しても変わらない事だと思います。

しかし、血糖値が悪化する原因として、食事と運動以外に考えなくてはならないことが何点もあり、医師としてはそれを見逃してはならないと思っています。

 

糖尿病は、年々血糖コントロールが難しくなっていく病気
⇒糖尿病発症時点で、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能は、糖尿病でない人の約半分になっているというデータがあります。要するに、「ちょっと糖が高い」とか「境界型」と言われている方でも、血糖値を下げる能力は高度に低下している事になります。そして、糖尿病を発症すると常に血糖値が高い状態になり膵臓は働き尽くめになります。年々膵臓は疲れ果て、果てはインスリンの泉は枯れていく事になります。

ですから、今通用してる糖尿病の薬も数年後には不十分となる事が当たり前の話なのです。

 

患者さんにあった薬や治療法が選択されていない
⇒明らかにメタボで過体重の患者さんに、栄養指導なども行わず更に肥満を招くようなSU薬と言われるような薬のみで治療したとしたら、より糖尿病を悪化させるといっても過言ではありません。

逆に痩せ型でインスリン分泌が悪いこと(生活習慣に大きな問題はなく、遺伝的、体質的な問題が大きいです)が原因の患者さんに、「もっと食事を制限しろ、もっと運動しろ」といったら栄養失調になり健康を損ねる事は明らかです。

血糖値が高いといってもその原因は様々です。個々の患者さんに合った治療が選択されていない場合、「糖尿病治療」がむしろ糖尿病を悪化させることすらありえます。

 

インスリンの調整が適切になされていない
⇒インスリン注射をしている患者さんで、ずっと同じ単位の注射を何年もしている患者さんをみかけます。また、自己血糖測定をしているにも関わらず、ほとんど主治医に見せる事もなく、血糖値が高い事を確認するだけになっているケースもよく見かけます。

自己血糖測定をする大きな目的が、ある時点での血糖値がいつも高い場合、そこに効いているインスリンの量を調整して血糖値を改善していく事です。

「責任インスリン」ともいいます。例えば、超速効型インスリンは、食後1〜2時間の血糖値の責任インスリンです。持効型インスリンは、空腹時血糖値の責任インスリンです。

食後1〜2時間の血糖値がいつも200以上など高い場合は、食直前に打っている超速効型インスリンを増量しましょう。

朝(空腹時)の血糖値がいつも高い場合は、1日1回打っている持効型インスリンを増量しましょう。

もちろん、インスリンの調整も例外は多々ありますが(ソモジーなど)、まずは責任インスリンの原則で地道に調整していけば、ほとんどの患者さんで目標の血糖コントロールに近づけることが可能となります。

 

他の病気を併発している
⇒最も怖いケースですが、たとえば悪性疾患(がん)を発症したことで血糖値が悪化していることがあります。特に糖尿病では膵臓がん、肝臓がん、大腸がんの発症率が増える事が知られています。血糖値が急に悪化した場合、これらの病気が隠れていないか速やかに調べる事が必要です。

 

血糖値に影響する薬を飲んでいる
⇒他科で処方されている薬で血糖値が悪化していることが良くあります。

代表的なのがステロイド剤、抗精神病薬です。患者さんが他科を受診している場合、服薬内容を必ず確認する必要があります。

 

 

自戒の意味も込めてですが、血糖値が悪化した患者さんに出会った時、すぐに患者さんの不摂生が原因と決めつけてはいけません。日々、糖尿病は難しい病気だと実感する次第です。