diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

2型糖尿病性を合併する慢性腎臓病に対する史上初の治療薬が発売

バイエル薬品は6月2日、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)治療薬、ケレンディア錠を発売しました。同剤は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(拮抗薬)で、2型糖尿病合併CKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬となります。

糖尿病の合併症である腎症、慢性腎臓病は、現在も新規透析導入のトップとなっており、治療は原疾患のコントロールに尽きます。血糖値、血圧、脂質のコントロール、肥満の改善、禁煙、腎性貧血があれば貧血の改善などが治療の基本となります。
今後もこれらの治療が基本なのは言うまでもないですが、あくまで原疾患の治療であり、2型糖尿病の合併したCKDに対する適応ではありませんでした。

ケレンディアは、2型糖尿病に対する慢性腎臓病に対する適応が認められ、その点で画期的な薬剤です。
作用機序としては、腎臓の尿細管および各組織に存在しているミネラルコルチコイド(MR)受容体を選択的に遮断することで、体液貯留量が減少し、腎臓、心臓の負荷が軽減され、加えて組織のMR受容体が遮断されることで臓器障害が抑制されると考えられています。
実際、FIDELIO-DKDなどの臨床試験において、腎不全+eGFRの40%以上の持続的低下+腎臓死につきプラセボ群と比較され、いずれの評価項目でも優位にケレンディア群で改善が認められました。
副作用としては、高カリウム血症がありえるため、採血検査で注意してみていく必要があります。

新薬であるため1年間は2週間処方となります。そのため、本格的に使用が増えるのは来年6月以降となることが考えられます。
なかなか有効な治療法がなかった糖尿病患者の腎臓病に対する新たな選択肢として、ケレンディアが発売されたことは、明るいニュースだと思います。