diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

糖尿病の「遺産効果」「高血糖の記憶」とは

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上の表では、青い線が早期の糖尿病治療を開始した人、紫の線が糖尿病初期には放置していて、後から治療を開始した人に相当します。紫の人も、数年が経過して合併症が出現してくる頃になると、糖尿病治療に取り組むようになり、その後はどちらの人も同じくらいのHbA1cで推移しています。

 

ところが、合併症の発生率を見てみると、初期段階で放置していた人では、いくらその後血糖値を良好に保っていたとしても、長年に渡ってそのツケが回ってくる事がわかります。逆に初期から良好な血糖コントロールを保っていた人は、合併症の発生率は低いまま推移している事が分かります。

このように糖尿病初期に頑張った成果は年余に渡ってつづくことを、英語ではLegacy effect(遺産効果)と言います。逆に、どのくらいの高血糖に、どのくらいの期間暴露されたかによってその後の糖尿病合併症の進行が左右されることをMetabolic memoty(高血糖の記憶)と言ったりもします。Legacy effect、Metabolic memoryともに本質的には同じ事を言っています。糖尿病では、いかに初期から良好な血糖値を保つ事が大事かという事です。