diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

インスリン治療をやめるには?

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最近、2人の患者さんがインスリン注射を離脱し飲み薬になりました。 

患者さんにとっては、日々のインスリン注射や自己血糖測定の手間が省けるだけでなく、糖尿病が重症である象徴のように感じている方も多いので、飲み薬になると非常に喜ばれます。

 

 インスリン治療は、依然として最も確実な効果が得られる治療であることに変わりはありません。医師側から見ると、まずは血糖コントロールが良い事が一番大事ですので、インスリン治療でしかそれが難しい場合は飲み薬に変える事はお勧め出来ません。なぜなら、血糖値が悪ければ、合併症が進行してしまう可能性が高まるからです。

インスリンを断固拒否し飲み薬に固執するがあまり血糖値が悪いまま経過し、結果として人工透析になってしまった・・・・・これでは意味がないばかりか最悪のケースと言えます。

インスリン治療が必須な方とは、まずインスリン依存状態(インスリン注射を打たない場合生命に関わる状態)の方です。具体的には1型糖尿病、2型糖尿病でも罹病歴の長い方などではこういう状態になる可能性があります。

インスリンが生存に必須とまでは言えないけれど望ましい方という場合も多くあります。まず非常に血糖値が悪い状態が長く続いて悪循環(糖尿病の世界では糖毒性なんて呼びます)が続いている人、こういった人はまずはきっちりとインスリン治療で血糖値を正し、悪循環を断ち切る事が大事です。

そして、肝臓や腎臓などが悪い方、妊娠中の方などもインスリン注射が望ましい方々です。

しかし、本人の努力次第(医療者側の働きかけ次第)でインスリン注射をやめられる可能性の高い方、という場合もあります。

一番多いケースは、食事療法が不徹底で、それが故に血糖コントロールが悪くインスリン注射を打っている方です。あるクリニックの報告では、体重を4kg減らす事でインスリン注射を離脱出来る方が多かった、とのことです。

 

今回、インスリンを離脱した2名の患者さん共通していたのは、初診時は非常に血糖コントロールが悪かった事(HbA1c 14%以上でした)、その後栄養指導をしっかり複数回受けて徹底した食事療法を行った事、それにより体重減少が見られた事(4kg以上)、最終的には必要なインスリン量も減ってきたこと、でした。

当院では、初診時から管理栄養士による栄養指導(そう聞くと堅苦しく聞こえますが、食事の相談をくつろいだ雰囲気の中受けられます)を推奨しています。

やはりどれだけ糖尿病の医学が発達しても食事療法を無視した魔法のような治療法はないようです。

 

最後に簡単なまとめです。

  1. 合併症の進行を抑えるためにも、血糖値を良好に保つ事が一番の目的です。
  2. よって、血糖コントロールにインスリン治療が必要であれば、十分な主治医との相談の上、しっかりとインスリン注射を行いましょう。
  3. しかし、食事療法が不徹底(たべすぎ、飲み過ぎ、堕落・・・)で体重がどんどん増えて、インスリンの注射量もどんどん増えていっている・・・・こういった方は、まずしっかりとした食事の勉強をし、日々実践しましょう。
  4. しっかりした食事により体重が減り、打っているインスリン量が減ってきたら・・・・

     

    インスリンをやめられるサインかもしれません。