diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

外来でのインスリン導入のメリット

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糖尿病の飲み薬を増やしても(その前に食事や運動療法を見直すことは言うまでもありません)HbA1cの値が高止まりの状態になると合併症進行を防ぐためにもインスリン注射が考慮されます。

そしてかかりつけ医の先生から大きな病院の糖尿病科へ紹介され、2週間の「教育入院」が行われ、飲み薬を全て中止し、強化インスリン療法と言われる1日4回の注射が行われるのです。

この事によるメリットは、入院という非日常を経験する事で、糖尿病に対する意識や取り組みが変わったり、カロリー計算された糖尿病食を実際に経験する事が挙げられます。また、悪循環の続いた(糖毒性と言います)身体に、1日4回のインスリンが染み渡り、一度リセットする(糖毒性の解除)ことで、自分の残存してはいたが眠っていた血糖値を下げる力が回復することが期待されます。

医学的にはいいことずくめだと思うのですが、デメリットは何でしょうか。

入院でのインスリン導入のデメリット

・入院費が高額

おおよそ2週間の入院で16万円程度かかると思われます(以前調べた金額ですので誤差があると思われます。)。下手をすると1年分の医療費がかかってしまうと言われています。

・仕事への影響

40代、50代の働き盛りの人が2週間以上職場を離れて入院するということは、この不安定な世の中では社会的な立場を危ういものにしてしまう可能性があります。

・あくまで「教育入院」という特殊な状況であるということ

入院中は素晴らしい血糖値で退院となるのですが、退院後は多忙な日常生活で理想通りにはいかず、すぐに血糖コントロールが乱れてしまうというパターンです。

 

入院が難しい人はインスリン注射を諦めて、外来通院で効果のない飲み薬を続けるしかないのでしょうか。HbA1cが高いまま推移すれば、合併症が進行してしまいます。

そこで、外来でのインスリン導入をお勧めしています。

確かに外来でインスリン導入となると、教育入院のような劇的な改善や連日のきめ細かい指導といったことはやや難しくなります。ただ、現在の優れた持効型インスリンを用いたBOTと言われるインスリン療法などでは、低血糖のリスクが非常に低く、少しずつ改善していくことが可能だと思っています。外来でのメリットは、いくつもあると思っています。

外来でのインスリン導入のメリット

・仕事への影響が少ない

外来での導入となるので、最初の1ヶ月は1、2週間に1回の通院となりますが、仕事などに影響なく始められます。また、1日1回の注射ですので、朝や寝る前に自宅で注射すれば、職場で注射する必要もありません。1日1回の注射は緩徐な効果ですので、低血糖を起こす心配も最小限に抑えられます。

・費用が入院に比べてはるかに抑えられる

・普段の生活で始めるので地道に改善していける

教育入院後のリバウンドといったことはありません。

 

入院、外来ともにメリット、デメリット両方ありますのでその方の状況に合わせて選択するべきだと思います。ただ、入院での導入にこだわるあまり、入院出来ない方のインスリン導入が先延ばしになり血糖コントロールが悪いまま放置されているといったことは避けなければなりません。

 

当院では、外来でインスリン導入を多数行っております。まだシステム上、不十分な点もありますが、今後更にきめ細やかな指導やフォローを心がけ、入院での導入に劣らないよう努力していく所存です。

 

飲み薬で血糖値がずっと悪くインスリン導入を勧められているがためらっている・・・・こういった方は一度御相談ください。