diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

1型糖尿病って?

日本IDDMネットワーク 1型糖尿病・1型IDDM

👆1型糖尿病について、患者さん向けの情報提供、ネットワーク、また1型糖尿病根治に向けた研究に対して基金の設立などを行っているNPOです。

一臨床医として、非常に感銘を受けたのが、昨年の冬から開始された、1型糖尿病発症間もない患者さんとその家族に対して、1型糖尿病に関する知識やtipsのつまった「希望のバッグ」を無償で届けようと言うプロジェクトです。実際、中高年発症の女性の1型糖尿病患者さんが、このバッグを受け取って非常に役に立ったと喜んでおりました。ただ、あまりの人気で現在品切れ状態のようで、準備が整い次第再会されるようです。

以下は、患者会向けの広報誌に載せた(私が)ものを転載しました。1型糖尿病が「治る」時代が早くくるといいですね。

(転載開始)

japan-iddm.net


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阪神タイガース岩田稔選手。高校2年生時に1型糖尿病を発症。1日4回インスリン注射をしながらも、プロ野球選手になった。公式戦で1勝するたびに10万円をIDDMネットワーク(1型糖尿病患者さん向けのNPO団体)に寄付している。

今回は、1型糖尿病について取り上げてみます。日本人の糖尿病の9割以上が「2型」糖尿病です。2型糖尿病は、典型的には遺伝的な素因を持った方が、中年以降、肥満や運動不足などの生活習慣の乱れから発症します。

では、「1型」糖尿病とは、❶どんな人が、❷どのくらい発症し、❸原因は何で、❹治療はどうするのでしょう?

❶どんな人が:日本での発症のピークは思春期にあり、10〜14歳が最も多いと言われています。小児糖尿病と呼ばれることもありますが、もちろん大人になってから発症される方もいます。

❷発症率:大体1年間あたり、10万人に1〜2人発症すると言われます。

❸原因:まだ完全には解明されていない部分がありますが、何らかのウイルス感染(風邪をひくのもウイルス感染です)をきっかけに、自分の体のリンパ球があやまって内乱を起こし、自分自身のインスリン工場、膵臓のランゲルハンス島B細胞、の大部分を破壊してしまうことで発病するようです。

❹治療:インスリン注射が原則です。現時点では、一生インスリン注射を続ける必要がありますが、iPS細胞などの技術の進歩で近い将来治る病気になるかもしれません。

ある日1型糖尿病を発症し、医師から「治らないから、一生インスリン注射が必要だよ」と宣告された際の患者さん、ご家族の精神的なショックは、想像するに余りあります。ただ、現在はインスリン製剤も良くなり(インスリンポンプを使用する事もあります)、良好な血糖コントロールを保てば、プロ野球選手にもJリーガーにもなれる時代になった事も事実なのですね。医療者ももっと勉強する必要を感じます。