diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

減量効果のある糖尿病薬について

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現在の糖尿病治療薬の花形(?)と言えば、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬だと思います。各種ガイドラインにおいても、肥満型糖尿病に対しては公式に推奨されるようになってきました。この2つの薬剤の最大のメリットは、それぞれ違った機序で減量効果があることです

 

従来の糖尿病薬と言えば、SU薬(グリメピリド、グリクラジド、グリベンクラミドなど)やインスリン注射を含め、適切な食事療法を徹底しない限り、肥満を招くものがほとんどでした。

飽食、運動不足の現代社会においては、肥満型の糖尿病患者が増えており、そういった薬を不適切に使用すれば、更なる肥満の悪化につながることも多いのです。肥満はいわば糖尿病の川の上流ですから、肥満を改善する事が糖尿病の改善につながるのは当然です。そこで最近、世界的に減量効果のある糖尿病薬が主流となってきています。

 

内服薬としてのSGLT-2阻害薬、そして注射薬のGLP-1受容体作動薬は、両者ともに明らかな減量効果が実証されています。

 

 

SGLT-2阻害薬の減量につながる機序としては、尿から1日におおよそ70〜80gのブドウ糖が体外に排泄されることです。ブドウ糖は1g=4kcalですから、大体300kcalのロスということになります。食事療法がしっかりしていれば、平均で2〜3kgの減量が期待出来ます。もちろん、食事運動療法の頑張り具合によっては、もっと劇的に減量される方もいます。

 

 

最近は、GLP-1受容体作動薬の処方が増えています。その中でも週1回注射タイプが患者さんの満足度も高い印象です。

 

GLP-1受容体作動薬の特徴としては

①注射薬である、②食欲抑制を介した減量効果がある、③低血糖を起こさず安全性が高い、④腎機能や動脈硬化など血糖値以外にも良い影響が期待出来る(報告がある)

 

といったところでしょう。

 

血糖値を最も確実に下げるのはインスリン注射ですが、過剰な投与による低血糖や体重増加が問題になることがあります。

そこで、自分のインスリンが残存している方で肥満があるような方には、同じ注射薬でも、むしろGLP-1受容体作動薬の方が有効である場合があります。

 

トルリシティという週1回の注射薬は、デバイスとしても非常に使いやすく(針をつける必要がない!)副作用も少なく患者さんの満足度が非常に高いです。

 

この2つの薬の減量効果はそれぞれ違った機序ですので、両者を併用している肥満患者さんも多く見られます。今後は、患者さん個々に応じたオーダーメイドの糖尿病治療がより求められる時代になってきています。

 

 

これだけ書いておきながらですが、最後に一言。やはり一番基本になるのは食事ですので、まずはそこを勉強、実践してからこういった薬の効果を享受出来るものと思います。

 

1型糖尿病にもSGLT2阻害薬が適応に!

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1型糖尿病の治療は、原則インスリン治療です。

しかし、インスリン治療で厳格な血糖コントロールを目指せば、重篤低血糖や体重増加などの問題が頻発し、少し高めのHbA1cで妥協せざるを得なかったのが現実です。

この度、体重減少効果があり肥満型2型糖尿病で処方が増えているSGLT2阻害薬のイプラグリフロジン(スーグラ)、ダパグリフロジン(フォシーガ)が1型糖尿病に対して適応となりました。

 

このことによるメリットは

インスリンを介さない血糖降下作用であるため、HbA1cの改善、必要なインスリン量の減少、そして体重減少効果が期待出来る事です。

デメリットとしては、副作用としてケトアシドーシスを誘発する可能性があるため、シックデイなどの脱水時は中止とすることが必須です。

 

現在、当院では3名の1型糖尿病患者さんにイプラグリフロジンを内服して頂いていますが、概ねHbA1cは1%弱は低下し、2kg程度の体重減少も見られており、有意な低血糖の増加は見られていません。シックデイ時の対応などの説明をしっかりし、適応を見極めることが必要なのは言うまでもありませんが、1型糖尿病患者さんに有効な治療手段が増えたのは間違いなく非常に喜ばしい事だと感じています。

 

 

当院での栄養相談の実施実績

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当院では、糖尿病、生活習慣病脂質異常症、高血圧、高尿酸血症など)治療において、食事療法を重視しております。

食事を見直す事で、糖尿病や生活習慣病の根底になる肥満の改善につながり、インスリン療法から離脱(飲み薬に切り替え)や最小限の薬にできる可能性が高まります。また1型糖尿病に対しては、食事療法の自由度が上がるカーボカウントの指導も積極的に導入しています。

現在、月100件程度の栄養相談を行っております。毎月継続的に受けることで、意識を高めている方も多くなっております。

押しつけでなくその方の生活スタイルに合わせた持続可能な食事療法の提案を行っております。

栄養相談をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

血糖値が良くならない時に考えるべきこと

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糖尿病患者さんが良好な血糖コントロールを保つのはそれほど簡単なことではありません。

糖尿病の外来を受診して血糖コントロールが悪化すると、主治医から「食事や運動をもっと気をつけなさい」と言われる患者さんが多いと思います。

もちろん、ストレスで食事が乱れたり冬場は寒さの影響もあって運動不足に陥ることが多いのは確かです。適切な食事療法、運動療法というのは糖尿病治療の根幹ですし、それはどんなに医学が発展しても変わらない事だと思います。

しかし、血糖値が悪化する原因として、食事と運動以外に考えなくてはならないことが何点もあり、医師としてはそれを見逃してはならないと思っています。

 

糖尿病は、年々血糖コントロールが難しくなっていく病気
⇒糖尿病発症時点で、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能は、糖尿病でない人の約半分になっているというデータがあります。要するに、「ちょっと糖が高い」とか「境界型」と言われている方でも、血糖値を下げる能力は高度に低下している事になります。そして、糖尿病を発症すると常に血糖値が高い状態になり膵臓は働き尽くめになります。年々膵臓は疲れ果て、果てはインスリンの泉は枯れていく事になります。

ですから、今通用してる糖尿病の薬も数年後には不十分となる事が当たり前の話なのです。

 

患者さんにあった薬や治療法が選択されていない
⇒明らかにメタボで過体重の患者さんに、栄養指導なども行わず更に肥満を招くようなSU薬と言われるような薬のみで治療したとしたら、より糖尿病を悪化させるといっても過言ではありません。

逆に痩せ型でインスリン分泌が悪いこと(生活習慣に大きな問題はなく、遺伝的、体質的な問題が大きいです)が原因の患者さんに、「もっと食事を制限しろ、もっと運動しろ」といったら栄養失調になり健康を損ねる事は明らかです。

血糖値が高いといってもその原因は様々です。個々の患者さんに合った治療が選択されていない場合、「糖尿病治療」がむしろ糖尿病を悪化させることすらありえます。

 

インスリンの調整が適切になされていない
インスリン注射をしている患者さんで、ずっと同じ単位の注射を何年もしている患者さんをみかけます。また、自己血糖測定をしているにも関わらず、ほとんど主治医に見せる事もなく、血糖値が高い事を確認するだけになっているケースもよく見かけます。

自己血糖測定をする大きな目的が、ある時点での血糖値がいつも高い場合、そこに効いているインスリンの量を調整して血糖値を改善していく事です。

「責任インスリン」ともいいます。例えば、超速効型インスリンは、食後1〜2時間の血糖値の責任インスリンです。持効型インスリンは、空腹時血糖値の責任インスリンです。

食後1〜2時間の血糖値がいつも200以上など高い場合は、食直前に打っている超速効型インスリンを増量しましょう。

朝(空腹時)の血糖値がいつも高い場合は、1日1回打っている持効型インスリンを増量しましょう。

もちろん、インスリンの調整も例外は多々ありますが(ソモジーなど)、まずは責任インスリンの原則で地道に調整していけば、ほとんどの患者さんで目標の血糖コントロールに近づけることが可能となります。

 

他の病気を併発している
⇒最も怖いケースですが、たとえば悪性疾患(がん)を発症したことで血糖値が悪化していることがあります。特に糖尿病では膵臓がん、肝臓がん、大腸がんの発症率が増える事が知られています。血糖値が急に悪化した場合、これらの病気が隠れていないか速やかに調べる事が必要です。

 

血糖値に影響する薬を飲んでいる
⇒他科で処方されている薬で血糖値が悪化していることが良くあります。

代表的なのがステロイド剤、抗精神病薬です。患者さんが他科を受診している場合、服薬内容を必ず確認する必要があります。

 

 

当院での糖尿病治療の実際

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            (当院の待ち合い室です)

 

3月、4月と転居などに伴い糖尿病で初めて当院に受診される方が多くなっております。当院では、糖尿病治療をどのように進めているか、簡単にご紹介します。少しでも当院の雰囲気を分かって頂ければ幸いです。

 

初診前:事前にお電話で予約して頂くとスムーズです(当日の受診も受け付けております)。紹介状、糖尿病手帳、薬手帳、今までの検査結果、自己血糖測定機など出来る限り持参して下さい。

 

初診時:一般問診表、糖尿病問診票を記入してもらいます

 

診察前:採血、検尿があります。検尿は、記名したカップをお渡ししますので、採取後所定のボックスに置いてください。(女性の方で生理の場合や尿がでない方はキャンセルでも構いません。)

また年に1回程、動脈硬化の程度を見る頸動脈エコーや腹部エコー、血管年齢、心電図の検査などを行っています。

 

診察:患者さん一人一人の病気の状態、生活にあった治療法を提案致します。決して押し付けの治療はしませんのでご安心下さい。

 

診察後:必要に応じて、管理栄養士、糖尿病療養指導士による栄養相談があります。食事療法を勉強出来る機会は貴重であり、当院の大きな特徴の1つと言えます。肥満のある方は、減量する良い機会にもなりますので積極的に受けられる事を推奨しています。

 

所要時間は、状況により変化しますが、

初診時:1時間〜1時間半

再診時:30分〜1時間

程度とお考えください。栄養相談やインスリンの導入、その他検査などが入りますともう少し時間がかかる場合があります。

 

混雑する時間としては、やはり午前中、午後の早い時間です。

夕方の16時台は余裕があることが多いです。