diabetesian’s blog

糖尿病専門医、草加市、内科

甲状腺が腫れていると言われたら

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健診や人間ドックで、甲状腺の腫れを指摘される方がいらっしゃると思います。

 

その際、どういったことを心配すればいいのかおおまかにお伝えします。

 

 

① まず本当に腫れているのか、腫れているのは甲状腺なのか確かめてみましょう。触診で甲状腺が本当に腫れているかどうか判断するのは、熟練した医師でも難しい場合があります。実際は腫れていない場合もよくあります。甲状腺の超音波検査を施行すれば、確実にわかりますので一度は実施しましょう。痛みもなく簡単な検査ですのでご安心ください。

 

② 甲状腺が腫れていると判明した場合、大まかにわけて2つのことを考える場合があります。

  A .  甲状腺が全体的に腫れている

  B .  甲状腺に出来物(腫瘍、嚢胞、過形成など)が出来ている

 

Aの場合、代表的な病気としては、橋本病、バセドウ病などが挙げられます。これらの病気の場合、甲状腺の働きに異常を伴う事がありますので、採血検査で甲状腺ホルモンを確認する必要があります。また両疾患ともに、自分の甲状腺に対する自己抗体が出来てしまう病気ですのでこれも採血でチェックする方が望ましいです。

大体1週間で採血結果がでます。

 

Bの場合、代表的には甲状腺癌、腺腫瘍甲状腺腫などが考えられます。サイズが大きく、形がいびつで砂粒のような石灰化を伴うようなものであれば甲状腺癌の可能性がありますので、穿刺吸引細胞診という検査が必要になる場合があります。

腺腫様甲状腺腫など良性と思われる場合は3ヶ月〜1年に1回程度超音波検査でサイズの変化を経過観察していく事になります。

 

 

甲状腺が腫れているかもしれない、と指摘された方はお気軽に受診してください。基本的には採血検査と超音波検査を行う事で大抵の甲状腺疾患の診断が可能です。

穿刺吸引細胞診や手術、アイソトープ検査(テクネシウムシンチ)などの精査が必要になる場合は、高次医療機関と連携をとっておりますのでご安心ください。

 

 

血糖値が悪いのは、患者さんの努力が足りないから?(再掲)

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糖尿病患者さんが良好な血糖コントロールを保つのはそれほど簡単なことではありません。

糖尿病の外来を受診して血糖コントロールが悪化すると、主治医から「食事や運動をもっと気をつけなさい」と言われる患者さんが多いと思います。

もちろん、ストレスで食事が乱れたり冬場は寒さの影響もあって運動不足に陥ることが多いのは確かです。適切な食事療法、運動療法というのは糖尿病治療の根幹ですし、それはどんなに医学が発展しても変わらない事だと思います。

しかし、血糖値が悪化する原因として、食事と運動以外に考えなくてはならないことが何点もあり、医師としてはそれを見逃してはならないと思っています。

 

糖尿病は、年々血糖コントロールが難しくなっていく病気
⇒糖尿病発症時点で、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能は、糖尿病でない人の約半分になっているというデータがあります。要するに、「ちょっと糖が高い」とか「境界型」と言われている方でも、血糖値を下げる能力は高度に低下している事になります。そして、糖尿病を発症すると常に血糖値が高い状態になり膵臓は働き尽くめになります。年々膵臓は疲れ果て、果てはインスリンの泉は枯れていく事になります。

ですから、今通用してる糖尿病の薬も数年後には不十分となる事が当たり前の話なのです。

 

患者さんにあった薬や治療法が選択されていない
⇒明らかにメタボで過体重の患者さんに、栄養指導なども行わず更に肥満を招くようなSU薬と言われるような薬のみで治療したとしたら、より糖尿病を悪化させるといっても過言ではありません。

逆に痩せ型でインスリン分泌が悪いこと(生活習慣に大きな問題はなく、遺伝的、体質的な問題が大きいです)が原因の患者さんに、「もっと食事を制限しろ、もっと運動しろ」といったら栄養失調になり健康を損ねる事は明らかです。

血糖値が高いといってもその原因は様々です。個々の患者さんに合った治療が選択されていない場合、「糖尿病治療」がむしろ糖尿病を悪化させることすらありえます。

 

インスリンの調整が適切になされていない
⇒インスリン注射をしている患者さんで、ずっと同じ単位の注射を何年もしている患者さんをみかけます。また、自己血糖測定をしているにも関わらず、ほとんど主治医に見せる事もなく、血糖値が高い事を確認するだけになっているケースもよく見かけます。

自己血糖測定をする大きな目的が、ある時点での血糖値がいつも高い場合、そこに効いているインスリンの量を調整して血糖値を改善していく事です。

「責任インスリン」ともいいます。例えば、超速効型インスリンは、食後1〜2時間の血糖値の責任インスリンです。持効型インスリンは、空腹時血糖値の責任インスリンです。

食後1〜2時間の血糖値がいつも200以上など高い場合は、食直前に打っている超速効型インスリンを増量しましょう。

朝(空腹時)の血糖値がいつも高い場合は、1日1回打っている持効型インスリンを増量しましょう。

もちろん、インスリンの調整も例外は多々ありますが(ソモジーなど)、まずは責任インスリンの原則で地道に調整していけば、ほとんどの患者さんで目標の血糖コントロールに近づけることが可能となります。

 

他の病気を併発している
⇒最も怖いケースですが、たとえば悪性疾患(がん)を発症したことで血糖値が悪化していることがあります。特に糖尿病では膵臓がん、肝臓がん、大腸がんの発症率が増える事が知られています。血糖値が急に悪化した場合、これらの病気が隠れていないか速やかに調べる事が必要です。

 

血糖値に影響する薬を飲んでいる
⇒他科で処方されている薬で血糖値が悪化していることが良くあります。

代表的なのがステロイド剤、抗精神病薬です。患者さんが他科を受診している場合、服薬内容を必ず確認する必要があります。

 

 

自戒の意味も込めてですが、血糖値が悪化した患者さんに出会った時、すぐに患者さんの不摂生が原因と決めつけてはいけません。日々、糖尿病は難しい病気だと実感する次第です。

 

 

 

 

インスリン治療をやめるには?

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最近、2人の患者さんがインスリン注射を離脱し飲み薬になりました。 

患者さんにとっては、日々のインスリン注射や自己血糖測定の手間が省けるだけでなく、糖尿病が重症である象徴のように感じている方も多いので、飲み薬になると非常に喜ばれます。

 

 インスリン治療は、依然として最も確実な効果が得られる治療であることに変わりはありません。医師側から見ると、まずは血糖コントロールが良い事が一番大事ですので、インスリン治療でしかそれが難しい場合は飲み薬に変える事はお勧め出来ません。なぜなら、血糖値が悪ければ、合併症が進行してしまう可能性が高まるからです。

インスリンを断固拒否し飲み薬に固執するがあまり血糖値が悪いまま経過し、結果として人工透析になってしまった・・・・・これでは意味がないばかりか最悪のケースと言えます。

インスリン治療が必須な方とは、まずインスリン依存状態(インスリン注射を打たない場合生命に関わる状態)の方です。具体的には1型糖尿病、2型糖尿病でも罹病歴の長い方などではこういう状態になる可能性があります。

インスリンが生存に必須とまでは言えないけれど望ましい方という場合も多くあります。まず非常に血糖値が悪い状態が長く続いて悪循環(糖尿病の世界では糖毒性なんて呼びます)が続いている人、こういった人はまずはきっちりとインスリン治療で血糖値を正し、悪循環を断ち切る事が大事です。

そして、肝臓や腎臓などが悪い方、妊娠中の方などもインスリン注射が望ましい方々です。

しかし、本人の努力次第(医療者側の働きかけ次第)でインスリン注射をやめられる可能性の高い方、という場合もあります。

一番多いケースは、食事療法が不徹底で、それが故に血糖コントロールが悪くインスリン注射を打っている方です。あるクリニックの報告では、体重を4kg減らす事でインスリン注射を離脱出来る方が多かった、とのことです。

 

今回、インスリンを離脱した2名の患者さん共通していたのは、初診時は非常に血糖コントロールが悪かった事(HbA1c 14%以上でした)、その後栄養指導をしっかり複数回受けて徹底した食事療法を行った事、それにより体重減少が見られた事(4kg以上)、最終的には必要なインスリン量も減ってきたこと、でした。

当院では、初診時から管理栄養士による栄養指導(そう聞くと堅苦しく聞こえますが、食事の相談をくつろいだ雰囲気の中受けられます)を推奨しています。

やはりどれだけ糖尿病の医学が発達しても食事療法を無視した魔法のような治療法はないようです。

 

最後に簡単なまとめです。

  1. 合併症の進行を抑えるためにも、血糖値を良好に保つ事が一番の目的です。
  2. よって、血糖コントロールにインスリン治療が必要であれば、十分な主治医との相談の上、しっかりとインスリン注射を行いましょう。
  3. しかし、食事療法が不徹底(たべすぎ、飲み過ぎ、堕落・・・)で体重がどんどん増えて、インスリンの注射量もどんどん増えていっている・・・・こういった方は、まずしっかりとした食事の勉強をし、日々実践しましょう。
  4. しっかりした食事により体重が減り、打っているインスリン量が減ってきたら・・・・

     

    インスリンをやめられるサインかもしれません。

 

 

若者にも多い甲状腺疾患:バセドウ病について

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原因不明の動悸や体調不良、多汗で悩んでいる方はいませんか?最近も2人の患者さんが数ヶ月前からの動悸、体調不良、体重減少(1人の方は1年で10kg痩せていました)で受診され、バセドウ病が発覚し治療を開始しています。バセドウ病は、比較的若い方にも多く(1人の方は10代でした)、女性が男性のおおよそ2〜4倍程度の発症率と言われています。体の代謝を活発にする甲状腺ホルモンが多量に作られてしまうため、「常に走っているような状態」になってしまいます。また、特有の眼症と言われる顔つきの変化も特徴的です。眼球突出や眼瞼後退(まぶたが上に上がったような感じになります)で気付かれる方もいます。昔からバセドウ病は美人が多いと言われる事もあるようですが、大きな目がその理由かもしれません。確かに某美人女優さんなどでこの病気をもっていた方もいます。

 

治療としては現状では9割以上の方が飲み薬で行なっていますが、必要に応じて手術やアイソトープ治療の適応になる場合もあります。なんとなく落ち着かない、手が震えるなどの症状から精神科を受診されて診断が遅れている方が多くいます。該当するような症状のある方は是非一度は甲状腺のチェックをお勧めします。

 

当院のクリニックロゴマーク

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これが現在の当院のロゴマークです。実はこのプリントは、クリニック開業前に業者さんとの打ち合わせ段階で提示されたものの1つです。

その他のプランとしては

こんなものや

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こんなもの

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こんなものがあります。

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個人的には今のクリニックのロゴマークを気に入っているのですが、今思い返してみるとplan Cだったんですね。昨年末の話でしたが、なにかすごく昔のことのように思い出されましたので、記事にしてみました。

<フリースタイルリブレ>導入しました

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今までの自己血糖測定では、穿刺時の痛みや1日数回行ったとしてもそのポイントでしか血糖値が分からないという弱点がありました。

今回、アボット社が発売したフリースタイルリブレは、上腕にセンサーをはりつけ(2週間持ち、お風呂にも入れます)、血糖値を読み込むリーダーをかざすだけ(服の上からでも可能です)で瞬時に血糖値を知ることができます。suicaやオサイフケータイと同じ仕組みだそうです。それだけでなく、過去8時間の血糖値のスランプグラフ、血糖値のトレンド(同じ血糖値80でも下がっている途中なのかどうかで意味合いが違ってきます)も把握出来る非常に画期的な商品です。

二の腕に装着する方法も非常にシンプルで、穿刺の痛みも全くありません。

今のところ、保険適応になっていませんが、1日何回も穿刺して自己血糖測定を行っている糖尿病患者さんは、自費で購入されても価値のあるものかと思います。

(おおよそリーダー、2週間使えるセンサーともに7000〜8000円です)

実際、意識の高い1型糖尿病患者さんは、日本で発売になる前から海外から輸入して使用していたようです。

当院でも、フリースタイルリブレを導入し、希望のある1型糖尿病患者さんや、頻回の自己血糖測定を行っている2型糖尿病患者さんへお届けしていきたいと思っています。

是非、フリースタイルリブレを使用してみたいという方は、医師、スタッフまでお問い合わせください。当院では既に1型糖尿病患者さんで使用されている方がいらっしゃいます。